エチオピア盤の新作で2枚組とは珍しいですね。
それも伝統派の歌手であれば、なおのこと。
84年生まれのタデセ・メケテは、アディス・アベバの南東99キロに位置する
オロミア州都アダマ出身の歌手。
結婚式の祝い歌などを歌っている歌手だそうで、ぼくは初めて聴きました。
少しハスキーさのあるノドでハツラツと歌う、力量のある歌い手です。
2枚のアルバムには、それぞれタイトルが付けられていますけれど、
2枚続けて聴いても、サウンドに変わりはないようです。
どちらもコンテンポラリーなサウンドで、マシンコ、クラール、
ワシントなどの伝統楽器をフィーチャーしたプロダクションとなっています。
反復の多い曲を手拍子とともに歌ったり、お囃子とのコール・アンド・レスポンスなど、
アムハラの民俗性を感じさせる曲がぎっしり詰まっています。
なかでも、“SITOTA” の2曲目で歌われている“Hayloga” は、
♪ヤー、ホー♪という掛け声も印象的な、アズマリの伝統的なレパートリーです。
戦闘の前の儀式で歌われてきた曲で、
チャラッチョウ・アシェナの遺作でも歌われていましたね。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-11-22
充実した2枚組の最後を締めるのは、エチオピアの主要四旋法の中でも、
もっとも暗黒なムードが漂うアンチホイェを使った曲で、これがまたスゴい。
10分30秒に及ぶ長尺なトラックとなっていて、
濃厚な旋律がしつこく聴き手を追い回し、ねぶるかのようで、昇天します。
エキゾ度満点なこの曲をラスト・トラックに置いたことで、
意欲的な力作2枚組が締まりましたね。
Tadesse Mekete "MAN MERETE - SITOTA" Revo Communication & Event no number (2018)