ナイロン弦ギター2台とカホンをバックに、女性歌手が歌う。
といっても、ペルーのクリオージョ音楽じゃないですよ。
なんとこれが、ヴェトナムなんだな。
『アクースティック&ボレーロ』というタイトルどおり、
戦前抒情歌謡をこんなシンプルな伴奏で歌うという試み、これは初めてですねえ。
それにしても、カホンとは。
爪弾くギターに、濡れそぼるメロディが絡むところは、
まるで昭和ムード歌謡のようでもあるんですけれど、
ウェットにならない、からりとしたクールさがあるのが、ヴェトナム歌謡の良さ。
ベタつかない、後味爽やかな哀感が、胸に沁みます。
カホンが入らず、ソプラノ・サックスやエレクトリック・ベースが入る曲もあります。
メコン・デルタ地方のタップムオイ出身のゴック・ハンは、
14年にデビューしたばかりの新人。
しっとりとしていて、ハイ・トーンで可憐な女らしさが香る歌声がいいですね。
さりげないヴィブラートやこぶし使いにも、品があります。
本作は本篇の7曲のあとに、男性歌手とデュエットした6曲が収録されています。
こちらは、ダン・バウ、ダン・チャン、ダン・ニーなど、
伝統の香りもたっぷりなザンカー色のある抒情歌謡となっていて、
別のアルバムとカップリングしたんでしょうかね。
それにしては、アルバム・タイトルは前半部分しか指していないし、
よくわからないアメリカ盤です。
ゴック・ハンはどこの事務所にも所属せず、フリーランスで歌っている歌手とのこと。
YouTube にミュージック・ヴィデオはたくさん上がっていますが、
本国ヴェトナムではCDが出ている様子がありません。
どういうことなんでしょう。
Ngọc Hân "ACOUSTIC & BOLERO - NGỌC HÂN" DL Music no number (2017)