バンド名もメンバーの名前もぜんぜん知らない、
初めて知るアーティストにヤられるという、快感。
キャリアをよーく知ってるようなヴェテランの新作だったら、
こんなカンゲキは味わえません。
自分の子供と同年齢の若い世代が頼もしく思えるのって、嬉しいねえ。
これって、子育てを終えた親世代の感慨でしょうか。
そんな歓喜に打ち震えたのが、クラッククラックス。
これが3作目という新作EPと偶然出くわして、ビックリ仰天。
今年の日本ものはceroの新作が圧勝と思っていたのに、
あっさりとそれを超える作品が登場したのには、心底驚かされました。
聞けばceroのサポート・メンバーを務めていたというんだから、
う~ん、才能ある者どうし、みんな繋がっているんだねえ。
それにしても、すごいな、この5人組。
ジャズがポップスのフィールドに越境するとこうなるという、
とんでもないテクニックとスキルが、圧倒的な説得力で迫ってくる作品です。
なんでも、ヴォーカルの小田朋美は東京藝大作曲科卒、
キーボードの小西遼はバークリー卒って、そりゃスキルがあるのも当然だわ。
ドラムスは石若駿。この人だけはウワサを聞いたことがあり、
東京藝大器楽科を首席卒業という経歴を耳にしたことがあります。
学校の優等生がポップスやジャズの世界で通用するわけでなし、
そんな評判が売り文句になるなんて、
音楽ファンもずいぶん権威的になったもんですねえ。
で、初めて彼のプレイに接してみたわけなんですが、
超弩級のテクニックに、ウワハハハと笑うしかありませんでした。
キックとスネアがズレまくる「zero」なんて、
お前はクリス・ディヴかと、思わずツッコミを入れずにはおれませんでしたよ。
「No Goodbye」のドラミングは、ロナルド・ブルーナー・ジュニアばりだし。
ハイライトは、オープニングの短いイントロに続いて始まる「O.K」。
このハッピーなダンス・トラックは、何度聴いても、踊り出さずにはおれません。
あと数か月で還暦を迎えようというオヤジに、
クラブのフロアで踊りたいと本気で思わせるんだから、スゴいよ、ほんと。
極上ポップのコード進行とハーモニー・センスを兼ね備えた、キラー・トラックですね。
一方、個人的に一番苦手とする、日本の70年代フォークを思わせる曲
(「病室でハミング」)もあって、最初、げっ、とか思ったものの、
途中から巧みな変拍子にすべり込むアレンジに舌を巻き、
激しいビートに変化して怒涛の展開を迎える後半には、
ひれ伏したくなりましたよ、もう。
小田朋美の歌唱力、特に日本語の表現力は、圧倒的ですね。
水曜日のカンパネラのコムアイもスゴいけど、彼女以上の才能だな。
水曜日のカンパネラのトラックメイクの通俗さを、ずっと残念に思っていただけに、
歌と演奏がとんでもなく高いレヴェルで拮抗し合う
クラックラックスのサウンドには、快哉を叫びたい気持ちでイッパイになりました。
CRCK/LCKS 「DOUBLE RIFT」 アポロサウンズ POCS1710 (2018)