すげぇ!
こんなごりごりの伝統ケイジャンが今日び聴けるなんて、奇跡的に思えますよ。
しかも歌っているのが、まだ31歳という若手フィドラーで、
これがデビュー作だというんだから、応援したくなるじゃないですか。
プリミティヴなケイジャンの味わいをまき散らす、ジョーダン・ティボドーは、
ルイジアナ州セント・マーティン郡サイプレス・アイランドという町の出身とのこと。
セントマーティン郡といえば、アメリカ合衆国の郡の中でも、
もっとも多くのネイティヴ・フレンチ・スピーカーの住人が暮らす土地柄。
サウス・ルイジアナでは、
年々ケイジャン・フレンチを話す人口が減っていると聞きますけれど、
音楽ではこういう若手がちゃんと登場するんだから、
ケイジャンの伝統は、脈々と受け継がれているということですよね。
このデビュー作で歌われているのも、もちろんケイジャン・フレンチ。
べらんめえ調の粗削りなジョーダンのヴォーカルは、原石の輝きを放っていて、
痛快ですねえ。パンキッシュな歌いぶりも、ロックぽいニュアンスより、
荒くれ者のケイジャンの姿を投影しているかのよう。
やけっぱちに歌う‘T'as Fait Ton Lit’ なんて、
声色も変わってやぶれかぶれなエネルギーをほとばしらせ、
強烈なキャラクターを露わにしています。
ジョーダンのフィドルをバックアップしているのが、
セドリック・ワトソンのアコーディオンに、ギター、ベース、ドラムスの4人組。
シンプルで引き締まったサウンドの逞しさは、痛快至極であります。
セドリック・ワトソンは、ジョーダンの先輩にあたるケイジャン・フィドラーですけれど、
ここでは後輩のためにアコーディオンに専念していて、‘Pas Paré’ 1曲のみ、
ジョーダンとフィドル・デュオを繰り広げていますよ。
ギターとドラムスは、曲によりコンビが交替しますが、
ドラムスのひとりジェイ・ミラーは、アコーディオンの名職人ラリー・ミラーの孫だそう。
ラリー・ミラーといえば、「ボン・ケイジャン」のブランド名で知られる
ケイジャン・アコーディオンの製作者で、
ケイジャン・フレンチ・ミュージック・アソシエーションを設立した中心人物の一人です。
メンバーも、ケイジャンの伝統を背負ったツワモノが揃っているわけですね。
レパートリーも本格的で、‘Blues Reconnaisant’ では、
ザディコのベースとなった、手拍子と足踏みによるコール・アンド・レスポンスの歌ジュレを
取り入れています。ブラック・クレオールのディープなルーツまで踏み込むあたり、
ルイジアナ・クレオール文化を伝承する気概を感じさせるじゃないですか。
ロスト・バイユー・ランブラーズやブルー・ランナーズといった先輩に続いて登場した、
ロッキン・ケイジャンのエネルギッシュなニュー・スター。
ライヴで踊りたいですねえ。誰か日本に呼んでくださ~い!
Jourdan Thibodeaux et Les Rôdailleurs "BOUE, BOUCANE, ET BOUTEILLES" Valcour VALCD0042 (2018)