プリミティヴでハードエッジなケイジャン・ミュージックから急転直下、
今度はえらくナンパで、スタイリッシュなザディコであります。
耳ざわりのいいスムースなザディコなんてと、いつもなら背を向けるところなんですけど、
これは後を引くというか、また聴き返したくなって、繰り返し聴くうちに、
すっかりお気に入りになってしまいました。
ロウテル・プレイボーイズを率いた
伝説のザディコ・プレイヤー、デルトン・ブラザーズの孫で、
以前『クレオールの帰還』というアルバムを取り上げたこともある
ジェフリ-・ブルッサードを叔父に持つ、コリー・ブルッサード。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-05-15
やっぱり名門ブルッサード家の出身は、ダテじゃないんですねえ。
コリーのヴォーカルは線が細く、へなちょこと思えるほどなのに、
そんな弱点を補ってあまりあるのが、ソングライティングの魅力。
ありていにいえば、コンテンポラリーR&Bの影響大なメロディ・センスと
リフ作りのうまさということに尽きるんですけど、そのセンスは飛び抜けています。
王道のザディコでありつつ、こんなに洗練されたタッチの構成を持った楽曲は、
これまでのザディコにはなかったですよねえ。
コーラスのハーモニーは、まるでコンテンポラリーR&Bです。
ザディコの伝統音楽としての本質をきっちりと押さえながら、
一方で若い世代らしく、ごく自然に親しんできたR&Bを、
無理なく溶け込ませているところが実に自然体で、
取ってつけたふうじゃないんですね。
スムースでポップなザディコが素直に楽しめる秘訣も、そこにありそうです。
ジェフリーのドロドロのダウンホームなザディコも格別ですけれど、
コリーの洗練されたポップ風味も、いかにもイマドキらしくて、
まぎれもないザディコのアコーディオンのサウンドを、
キレよくクールに聞かせるところは、得難い個性です。
コンテンポラリーR&Bと無理なく溶け合った秀逸さでいえば、
セネガルのンバラの若手シンガー、ビライムくんと双璧ですね。
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Koray Broussard & Zydeco Unit "MORE TIME" no label no number (2016)