まさしく百戦錬磨の面々。
中央線ジャズの豪傑がずらりと並んだ新バンドのクレジットに、
これは買いでしょうと飛びつこうとした矢先、
一夜だけのアルバム発売記念ライヴを新宿ピットインでやると聞き、
さっそく予約を入れ、CDは会場で買うことにしました。
事前にCDを聞かず、ライヴで初めて聴くなんてことは、
ぼくの場合、けっしてしないんだけど(だからフェスには足が向かない)、
長年聴きなじんできたこのメンバーなら、中身は間違いなし、保証付ですよ。
10月23日のライヴは、残念ながらメンバー勢揃いとはならず、
前日に退院したばかりの片山弘明が、大事をとって欠。
代わりに、バリトンの吉田隆一とテナーの佐藤帆がゲスト参加したんだけど、
吉田隆一を高く買っているぼくにとっては、これは嬉しいサプライズでした。
1部は、加藤崇之と林栄一がステージにあがり、
2人のフリー・インプロヴィゼーションからスタート。
エフェクトを駆使したギターから、変幻自在なサウンド空間を生み出す加藤と、
硬質な音のアルトを過激に吹き鳴らす林に、ぐいぐい引き込まれました。
やがてメンバー10人が揃って、
フリー・ジャズとファンクとロックをないまぜにした轟音ファンクを炸裂。
耳をつんざくホーンズの大音響が、ピットインの狭いハコにとどろきます。
地響きのような早川岳晴のベースが腹にごんごん響き、
湊 雅史と藤掛正隆のツイン・ドラムスが豪胆なグルーヴを巻き起こします。
これぞ耳じゃなく、身体で聴く快楽ですね。
大音量に負けじと、小柄な桑原延享が
アンダーグラウンド・ファンク・ユニヴァースのマニフェストをラップする姿にも、
ジンときましたね。すっかり髪が白くなっていたのには少し驚かされましたけれど、
ジャジー・アッパー・カットを代々木のチョコレートシティで観たのを最後に、
あれから25年も経ってるんだから、そりゃあ、髪も白くなるわなあ。
ジャジー・アッパー・カットは、ジャングルズの桑原延亨、フールズの川田良、
SALTの早川岳晴と石渡明廣、ヒカシューの角田犬らが集まり、
90年代前半に活動していた大所帯のヒップホップ・バンド。
当時SALTのファンだったことから、このバンドも気に入って、
ライヴに通うまでのファンになったんでした。
桑原延享のラップって、不器用きわまりないんだけど、
借り物でない身体感覚にもとづいた言葉にウソがなくて、信頼が置けます。
2部の始まりで、石渡明廣のギターと佐藤帆のテナーをバックに、
フールズの曲を歌ったのも、彼の変わらぬロック魂が滲んでいたし、
川田良やECDの名をあげ、天国の彼らに届けとばかりにラップする姿は、
ロックやラップに親しまないぼくでも、素直に共感できました。
ライヴを先に体験してしまうと、CDが物足りなく聞こえたりするものですけれど、
サウンドを整理しながらも、ツワモノたちのエネルギーを削ぐことなく
パッケージしたのはグッジョブです。
ライヴでは泥酔して醜態を晒した後藤篤のトロンボーンも、よく鳴っていますよ。
メンバーにサインを入れてもらったら、吉田隆一がおちゃめにも、
自分のサインの下に(片山?)と書いてくれましたけれど、
片山弘明がまた元気にブリバリと吹きまくれるよう、早い回復を祈っています。
Underground Funk Universe 「UNDERGROUND FUNK UNIVERSE」 Fulldesign FDR1038 (2018)