ベネズエラの経済崩壊、いったいどうなってしまうんでしょうか。
年末にはインフレ率が100万パーセントに達する見通しをIMFが出していて、
08年のジンバブウェの悪夢がよみがえります。
すでに300万人がコロンビアや周辺国へ脱出していて、
国家崩壊の様相さえ呈していますね。
これでは音楽どころではない国内事情でしょうが、
ひさしぶりにベネズエラ音楽を聴ける機会がありました。
日本でベネズエラ音楽の普及に務める東京大学の石橋純さんの企画で、
フルート奏者オマール・アコスタのトーク&ミニ・ライヴが開かれました。
場所は石橋さんのホームグラウンド、東大駒場キャンパスのホールです。
ここに来るのは、12年にチェオ・ウルタードを招いた公演以来ですね。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-07-02
スペイン国立バレエ団の来日に帯同してやってきたオマール・アコスタが、
石橋さんに連絡を入れてきたことで、今回のライヴが実現したんだそう。
オマール・アコスタは98年にスペインへ渡り、フラメンコのグループで演奏活動を行い、
12年から16年にかけてスペイン国立バレエ団の音楽監督を務めていたんだそうです。
今回は監督ではなく一演奏家としての来日だったので、自由も利いたんでしょう。
同じスペイン国立バレエ団で来日し、オマール・アコスタ・トリオの一員でもある、
アルゼンチン人ギタリストのセルヒオ・メネンとのデュオ演奏を聞かせてくれました。
オマール・アコスタが92年に出したデビュー作は、
ベネズエラの都市弦楽に夢中になっていた時期に、
アンサンブル・グルフィーオなどとともに愛聴した、忘れられないアルバムです。
その1曲目に収録されているユーモラスなメレンゲ
‘El Cucarachero’ を演奏してくれたのは、嬉しかったなあ。、
終演後、このCDをオマールに差し出したら、オマールは大きな声をあげて、
「わお! このCD、ぼく持ってないんだよ!」だって。
古いレコードやCDにサインをもらう時の、あるあるですね。
オマールのフルートが黒いので、最初木管かなと思ったら、
特殊な合成樹脂製で、特許を持つ台湾の工房で作られているものだそう。
オマール自作のショーロ‘Choreto’ では、後半の倍テン(ダブル・タイム)にしたところから
白いピッコロに持ち替え、急速調のリズムにのせて鮮やかなタンギングを披露していました。
ホローポ、ダンソン、バルス、(アルゼンチンの)サンバ、タンゴに、
バッハ曲をオンダ・ヌエバ(ベネズエラ流ジャズ)で演奏するなど、
自在に吹きこなすオマール・アコスタの妙技を堪能した秋の午後でした。
Omar Acosta Ensemble "VENEZOLADA" Producciones Musicarte MS090CD (1992)
Omar Acosta Trio "LATITUD" no label M3878 (2017)