太鼓と木琴の鈍く重い響きが打ち鳴らされ、溢れ出る倍音。
ヘヴィーなノイズとともに身体が共鳴して、
奥底の芯をじーんと揺り動かされるような快感をおぼえます。
「これぞアフリカのパーカッション・ミュージック!」という魅力あふれる一枚と出会いました。
マサンカ・サンカイは、コンゴ民主共和国南部のカサイ州、
ルバ人の伝統音楽ムトゥアシを演奏するグループです。
フォルクロールと呼ばれる各民族の伝統音楽グループは星の数ほどありますが、
クラムド・ディスクの「コンゴトロニクス」という仕掛けによって、
広く世界の関心を集めることになりました。
実はこのマサンカ・サンカイも、
“CONGOTRONICS 2 : BUZZ’N’RUMBLE FROM THE URB’N’JUNGLE” の冒頭1曲目と
6曲目にフィーチャーされたグループなんですね。
彼ら単独のCDを初めて聴いたんですが、
クラムド・ディスク盤よりナチュラルで、もっとムキ出しの強烈なビートに圧倒されました。
マサンカ・サンカイは、ジャケット写真にも写るンブヤンバ(左)とカボンゴ(右)を中心に、
70年代から活動しているグループで、二人が弾くリケンベのほか、
木琴、ビビり太鼓、ガラス瓶のアンサンブルとなっています。
リケンベの音は、サワリ音の利いた木琴にかき消されてほとんど聞こえないんですが、
さらに強烈なのが、ビビり太鼓のディトゥンバ。
ディトゥンバは、西アフリカのジェンベのような乾いた高音とはまったく正反対の、
重く鈍い響きを特徴としています。
というのも、太鼓に張る羊皮をジェンベのように締め上げるのでなく、ゆるーく止めるんですね。
皮の中央には練り物を押し付け、ペースト状に丸く伸ばされます。
なんだかインドのタブラを思い出しますけれど、ブルキナ・ファソのモシ人の太鼓ベンドレでも、
太鼓の皮に練り物を塗ってチューニングする技法がありますね。
ディトゥンバは底に穴があいてないので、これだけでは音が出ないんですが、
横に開けられた小さな穴がビニールで覆われ、止めてあります。
これによって、ビーン、ビーンと強烈なバズ音がでるというわけです。
バラフォンの共鳴器であるヒョウタンの穴に、クモの巣を張るのと同じ理屈ですね。
ディトゥンバもその昔はクモの巣が張られていたそうです。
ビビり太鼓のディトゥンバと木琴マディンブの演奏というと、
忘れられないのが、ヒュー・トレイシーが50年代に残した名録音です。
ここにはルバ人だけでなく、隣接のカニョク人による演奏も収録されています。
演奏のことばかり書いちゃいましたけれど、
説経語りや説教師のような語りもの的なコール・アンド・レスポンスの歌も迫力満点で、
野性味溢れるアフリカ音楽の生命感を堪能できる名盤ですね。
Masanka Sankayi "KUTUMBA NKUEYAMANGANA" Boutique Troifoirien TFR0002
[CD+DVD]Masanka Sankayi, Kasai Allstars, Sobanza Mimanisa, Kisanzi Congo, Bolia We Ndenge, Basokin, Konono No.1
"CONGOTRONICS 2 : BUZZ’N’RUMBLE FROM THE URB’N’JUNGLE" Crammed Discs CRAW29 (2005)
Field Recordings by Hugh Tracey "KANYOK AND LUBA, SOUTHERN BELGIAN CONGO 1952 & 1957" Stichting Sharp Wood Productions SWP011/HT05