またしても清廉な歌声がスコットランドから届きました。
18年のBBCラジオ、スコットランド若手伝統音楽家賞を受賞した、
グラスゴーの若き新進女性歌手のデビュー作。
このクリアーなクリスタル・ヴォイスに、
ココロときめかないトラッド/フォーク・ファンなんて、いないでしょう。
ただきれいに歌うだけじゃありません。
アルバム1曲目を飾るのは、ジーニー・ロバートソンが歌った伝承曲の
‘The Moon Shine On My Bed Last Night’ なんだから、
スコットランド古謡へのまなざしも確かです。
才能豊かな若きハンナを盛り立てるのが、ベーシストでプロデューサーの
イアン・バートン、シボーン・ミラーやキム・カーニーなど、
多くの女性トラッド/フォーク・シンガーのプロデュースを務めるほか、
ジャズ・フィールドでの活躍もめざましいミュージシャンです。
そのせいか、イントロや間奏などなにげないところで、
おやっと思わせるハーモニーやフレージングを聞かせるところは、イアンの仕業でしょうか。
トラッド/フォークの味を損なわないように、目立たないところで、
カクシ味的なアレンジが利いています。
ハンナの歌いぶりで引き込まれたのが、
ディック・ゴーハンが歌った伝承曲の‘Erin Go Bragh’。
ひそやかに歌う曲とは違う力の入った歌いぶりに、
はっちゃけた素の顔が垣間見れて、とても魅力的でした。
フィル・カニンガムのアコーディオンをバックに、
デイヴィ・スティールの曲で静かに締めくくった、アルバム・ラストまで、
コンテンポラリーなフォーク・サウンドも抑制が利いていて、満足感が得られます。
Hannah Rarity "NEATH THE GLOAMING STAR" Hannanh Rarity HR085NEA (2018)