グレッチェン・パーラトを思わせる、
ひそやかでデリケイトな歌声に、息をのみました。
短いオープニングのイントロに続いて、するりとすべり込む、
綿菓子のようなふわーっとしたサウンドに、もう夢見心地。
人力ドラムスの生音グルーヴ、
鍵盤をレイヤーしたサウンドがもたらすネオ・ソウルの快楽。
う~ん、パトリシア・マルクスの新作、やるじゃない。
5歳でテレビ・デビュー、9歳で歌手デビューした
パトリシアの歌声を初めて聴いたのは、
ブラジル音楽評論家の大島守がプロデュースした
92年作の“NEOCLÁSSICO” でした。
そのアルバムは、当時としては珍しい本格的なボサ・ノーヴァ作品でしたけれど、
その後出た、クラブ・ミュージック仕様の95年作“QUERO MAIS” の方が、
この人の本領だったと思います。
ジョルジ・ヴェルシーロ、エジ・モッタ、マックス・ジ・カストロの曲に、
‘What's Going On’ やジャクソン5の‘Never Can Say Goodbye’ を取り上げた
レア・グルーヴ感覚満載のメロウ・グルーヴなアルバム。
なんとカルトーラの‘Acontece’ まで歌っているんですよ。
DJユースに重宝しそうな作品で、その昔家族とのドライヴでよく聴いたものです。
車を運転しなくなって15年、すっかりご無沙汰ですけど。
その後は、トラーマから出したエレクトロ/ラウンジ・ボサのアルバムや、
DJのブルーノ・Eと結婚して発表した共同名義作などがありましたけれど、
ロンドンのクラブ・シーンに関与するようになってからの作品はあまり興味を持てず、
すっかり疎遠となっていたので、この新作には見直しましたね。
エルベルト・メデイロスの鍵盤が生み出す甘美なサウンドが、
とにかくここち良いったら、ありません。
ムーンチャイルドあたりを参照してそうな音づくりで、
スネアの音が大きなドラム・サウンドも、イマドキといえますね。
パトリシアの声も、以前より脱力した軽い声で歌っていて、とても魅力的です。
Patricia Marx "NOVA" LAB 344 83369338 (2018)
Patricia "NEOCLÁSSICO" Camerati TCD1007-2 (1992)
Patricia Marx "QUERO MAIS" Lux 011023-2 (1995)