サンバの現代的な再解釈といえば、
ロムロ・フローエスの前衛サンビスタぶりが筆頭格といえそうですけれど、
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01
ジェラルド・ペレイラをカヴァーしたアナイー・ローザの新作も、
すごく面白いアルバムに仕上がりましたね。
昨年がジェラルド・ペレイラの生誕100周年だったのか。
これなら、ジェラルドも天国で喜んでいるんじゃないかな。
プロデュースは、ジルベルト・モンチとカカ・マシャード。
いい仕事しましたねえ。
酒と女とケンカに明け暮れ、ボヘミアン人生をまっとうした(?)、
ジェラルド・ペレイラのサンバに独特なファンキーさが、
アヴァンなセンスによって、現代的な意匠として見事蘇っています。
アナイー・ローザは、原曲のメロディを崩さず忠実に歌っていて、
プロダクションがあの手この手で演出しているんですよ。
シンコペイトするジェラルドのサンバは、
どんなにイジっても、ぜんぜん壊れないというか、
現代的なアレンジにも耐えうる強度を持っている証明ですね。
ジェラルドのサンバが持つファンキーな感覚を、
現代的なアレンジが浮き彫りにしています。
ロムロ・フローエスが前に出したネルソン・カヴァキーニョのカヴァー作は、
案外面白くなかったんですけれど、それはアレンジの問題じゃなくて、
原曲が持つ力の違いのように思えたんですけれど、
本作を聴いて、その考えは間違いじゃないと確信が持てましたね。
ネルソン・カヴァキーニョなどの深い抒情味を持つマンゲイラのサンバに、
アヴァンなアレンジを施すと、どうしても作為が前に出すぎて、
不自然になってしまうんですよ。
ところが、ジェラルド・ペレイラのようなノエール・ローザから受け継いだ
街角のボッサ感覚に富んだサンバには、
アヴァンなセンスを平気で受け容れてしまう度量が備わっています。
それはいわば、ストリートが育てたサンバの強度なんじゃないでしょうか。
コミュニティに育まれたサンバの抒情にはない、
ケンカと酒に明け暮れたマランドロ(やくざもの)の腕っぷしの強さのようなものが、
そのサンバにはある。そんなことを感じさせてくれるアルバムなのでした。
Anaí Rosa "ATRACA GERALDO PEREIRA" SESC CDSS0118/18 (2018)