おぅ! こういうサウンドを待ってたんだよ。
ニジェールのトゥアレグ人ギタリスト、アブバカル・アナナ・アルーナ率いる
多国籍ユニット、ケル・アスーフの新作。
過去2作からぐんと跳躍した、トゥアレグ・ロック・アルバムを作りあげてくれました。
前2作のサウンド・メイキングが、ロックを志向しているわりには、
どこか徹底できていないツメの甘さを感じて、気になっていたんですよね。
可愛らしい女性コーラスも、ロック・サウンドにはそぐわなかったし、ビートも軽めで、
もっと重量感のあるグルーヴが必要だよなと、不満が残っていたんです。
それが今作の変貌ぶりはどうですか!
3ペースのシンプルな編成となり、グッと重心が下がって、
ボトムの厚いサウンドになり、ヘヴィーなロック・サウンドに変わりました。
ドラマーの交替が大正解だったんじゃないですかね。
やるならこのくらい徹底しなくっちゃね、という胸がすく仕上がりに大満足です。
昨年アマール808で注目を浴びたチュニジア人プロデューサー、
ソフィアン・ベン・ユーセフが、前作に続いてプロデュースとアレンジをしているんですが、
今回グリッタービートへ移籍したことも功を奏したのか、
ソフィアンのアレンジの活躍ぶりがうかがえます。
まずベーシストの不在を、ソフィアンのキーボードが担っていること。
なんだかシンセ・ベースが活躍する最近のジャズみたい、
なんて連想も沸き起こりますけれど、それは関係ないにせよ、
ハモンドやモーグなどのヴィンテージな鍵盤使いが、
シンプルな編成の中で、ラウドなサウンドづくりに寄与していますね。
パワー・プレイのように聞こえるサウンドのなかで、
緻密に鍵盤の音を重ねていることがわかります。
ニジェールのトゥアレグ系ミュージシャンでトゥアレグ・ロックを聞かせるといえば、
ボンビーノが筆頭格でしたけれど、ケル・アスーフが良きライヴァルとなりそうですね。
Kel Assouf "BLACK TENERE" Glitterbeat GBCD068 (2019)