オーソドックスなジャズ・ギター・アルバム。
一言でいえばそれに尽きるんですけど、これがとびっきりの内容なんです。
3年前に出ていたサン・パウロの新進ギタリストのデビュー作で、気付いて良かったあ。
正統派のジャズ・ギターでこれほどの逸品、ありそうでなかなかありませんよ。
ギターのトーン、ソロ・ワーク、アンサンブル、楽曲、アレンジ、
すべてがハイ・レヴェルという、欠点の見当たらないアルバムです。
箱ものギター特有のクリアで柔らかなトーンに、まず、耳が反応します。
指板をすべるなめらかなソロは、柔肌を愛撫するジゴロの指先のよう。
都会の夜のムード溢れるメロウな楽曲を引き立てる、
歌心溢れるラインの組み立て方にも、ウナらされます。
泣けるメロディ満載で、インストなのがもったいないと思えるほど、
「歌」を感じさせるトラックが並びます。
メロディは甘すぎず、苦みも含んだメロウさが、実にセクシーなんです。
せつなさや、やるせなさもたっぷり混じった、
心の傷みを優しく包み込む楽曲にシビれます。
メカニカルなラインをテーマに持つ‘Cotopaxi’ ですら、
なんともいえない哀感が漂うんだから、この人の作曲能力の高さがわかりますね。
サウンドにブラジルのテイストはないものの、
これほどの歌心あふれる作曲能力は、やはりブラジルならでは。
フェリーピ・ヴィラス・ボアスに続く、要注目のギタリストです。
Eduardo Belloni "BACK TO THE BEGINNING" no label no number (2016)