ブラジルのリイシュー専門レーベル、
ジスコベルタスの新作ニュースに心踊ったのは、ひさしぶり。
ここ数年ジスコベルタスのリイシューは、
守備範囲外のジョーヴェン・グアルダやブレーガ、ディスコものが続いていたので、
乏しい資金を散財せずにすんでいたんですけれども。
ところが今回は、往年のサンバ・カンソーン女性歌手という、
60歳以上男性客限定みたいなラインナップで、
まんまとターゲットになってしまいました。
エリゼッチ・カルドーゾの79年作『冬の季節』という、
往年のサンバ・ファンには懐かしい名作のCD化もあったりして、
日本盤を持っているサンバ・ファンなら、即買い必至でしょう。
エリゼッチのアルバムはサンバ・ファンならよくご存じと思うので、
日本ではまったく知られていない、エレーナ・ジ・リマを取り上げましょう。
今回CD化されたのは61年のRGE盤で、もちろんこれが初CD化ですけど、
そもそもエレーナ・ジ・リマを聴いている人って、日本に何人いるんでしょうね。
ブラジル音楽のディスク・ガイドで、その名を目にしたことはないし、
ぼくの記憶のある限りでは、40年前に中村とうようさんが
「中南米音楽」(「ラティーナ」の旧名です)に寄稿していた、
ブラジル音楽のレーベル別連載記事で触れていたのがあったくらいのもので、
ほかにエレーナ・ジ・リマについて書かれた記事なんて、見たことないもんなあ。
それくらい日本ではまったく知られていないサンバ・カンソーン歌手ですけれど、
エリゼッチやマイーザのような大物を聴いているのに、
エレーナ・ジ・リマを知らずにいるのは、もったいない。
アルト・ヴォイスの落ち着いた声で歌う人で、押し出しの強さはないものの、
その控えめな歌いぶりが、ツウを喜ばせるタイプといえます。
エレーナ・ジ・リマは26年リオ生まれ。22歳でリオのナイトクラブで歌い始めると、
瞬く間に大人気となり、50年代初めにはサン・パウロのナイトクラブに引き抜かれ、
成功を収めた歌手です。52年にコンチネンタルへ初録音し、
56年に出した初のレコード(10インチ)は、ぼくも持っています。
この10インチは未CD化ですけれど、
エレーナ・ジ・リマのアルバムはけっこうCD化されていて、
これまで58年コンチネンタル盤、65年RGE盤、75年コパカバーナ盤が出ているんですよ。
特に65年のRGE盤はエレーナの代表作とされる名作で、
サンバ・カンソーンが好きなら、外せない作品でしょう。
CDが出てからだいぶ経つので、LPの方が簡単に見つかるかもしれませんね。
古いブラジル盤は、ボサ・ノーヴァの狂乱ブームが過ぎても、
高値安定してしまった感がありますけれど、
サンバ・カンソーンは客がつかないから、今でも手ごろな値段で買えるはずです。
古いサンバ・カンソーンが再評価されるなんてことは、
これからも、まあないでしょうね(タメ息)。
Helena De Lima "A VOZ E O SORRIO DE HELENA DE LIMA" RGE/Discobertas DBSL104 (1961)
[10インチ] Helena De Lima "DENTRO DA NOITE" Continental LPP38 (1956)
Helena De Lima "VALE A PENA OUVIR HELENA" Continental/Warner 5051011128028 (1958)
Helena De Lima "UMA NOITE NO CANGACEIRO" RGE 0496-2 (1965)
Helena De Lima "É BREVE O TEMPO DAS ROSAS" Copacabana/EMI 527305-2 (1975)