スコットランド、きてるなあ。
ハンナ・ラリティにファラと、注目のアルバムが続出じゃないですか。
去年大注目したアイオナ・ファイフのミニ・アルバムが出るというので、
心待ちにしていたところ、それとはまた別の嬉しいアルバムが届きましたよ。
それが、ウクレレを弾き歌う女性歌手クレア・ヘイスティングスのソロ第2作。
女性4人組のトップ・フロア・テイヴァーズのメンバーとしても活動している人ですね。
今回はウクレレはお休みで、歌に徹し、エレクトリック楽器の使用もなし。
ギター、フィドル、ピアノ、アコーディオンの4人が伴奏を務めています。
今作のテーマは「旅」で、伝承曲を中心に自作の2曲と、
アメリカのルーツ・ロック・バンド、ブラスターズのメンバー、
デイヴ・アルヴィンの‘King Of Callifornia’ を取り上げています。
デビュー作と変わらぬ凛とした粒立ちの良い発声に、ホレボレとしますねえ。
スコットランドの女性歌手って、声の透明感に共通性があって、
イングランドとはまったく異なる土地柄を感じます。
そして、きりりとしたシンギングをもりたてる伴奏がまた見事です。
たった4人の伴奏とはいえ、フィドルを多重録音するなど、
丁寧なアレンジが施されていて、クレジットはありませんが、
通奏低音のように流れるシンセやエフェクトも、ごく控えめながら使われています。
アルバムの最後を締めくくるのは、
18世紀起源とされるイングランドの伝承曲‘Ten Thousand Miles’。
ニック・ジョーンズの名唱でも知られるこの唄は、
アメリカでは‘Fare Thee Well’ のタイトルで知られ、
ボブ・ディランやジョーン・バエズほか、
多くのフォーク・シンガーが取り上げてきた旅の唄ですね。
クレアはこの曲を無伴奏の多重唱で歌っていて、
旅立つ恋人との別れを、映画のワン・シーンのように描写します。
伝承歌の世界では、歌い手が余計な感情を加えず、
詩と旋律が生み出す情感だけで、雄弁な物語となりうることを、
このトラックは証明しています。
Claire Hastings "THOSE WHO ROAM" Luckenbooth LUCKEN002CD (2019)