自慢することじゃありませんけど、
マイケル・ブレッカーのソロ・アルバムは、1枚も手元に残っていません。
ブレッカー・ブラザーズ・バンドの時代から、ずっと聴いてきた人なんですけれども、ねえ。
その昔、買ってはがっかりして売り、その後も買っては売りを繰り返し、
いつの頃からか、もうリーダー作は持ってなくていいやと諦めちゃいました。
87年に遅すぎる初リーダー作が出た時は、
期待が大きすぎて、落胆も激しかったもんです。
EWI(ウインド・シンセサイザー)を吹いてたのも、いけなかったよなあ。
ぼくはあの楽器が大嫌いなんですよ。
この世から無くなって欲しいとさえ思ってますからね、いや、ホントに。
一時代を築いたサックス奏者でありながら、
ソロ・アルバムはパッとしなかった人でしたよねえ。
まるで機械が吹いてんじゃないかと思わせるメカニカルなプレイは、
すげぇーというオドロキ半分、反発半分であったことも確かなんですが、
そんな批判さえネジ伏せてしまう超弩級のプレイは、有無を言わせぬ迫力がありました。
ブレッカー・ブラザーズ・バンドやステップスでの活躍、
ジョニ・ミッチェルの『シャドウズ・アンド・ライト』をはじめ、
サイドメンとして数限りない名演は、70~80年代に集中していました。
90年代後半に、保守的なアクースティック・ジャズをやり始めた頃は、
マイケル・ブレッカーの存在理由を感じられず、
ぼくにとってはもう過去の人になっていたんですが、
そんな頃に録音されていた未発表ライヴに、心躍らされました。
それが本作、95年10月20日、ヘルシンキのロイヤル・コットン・クラブで収録された、
フィンランドの名門ビッグ・バンド、ウモ・ジャズ・オーケストラとの共演ライヴです。
80年代をホウフツとさせるパワフルなプレイに、
これ、これ、これですよと、思わず膝を打っちゃいました。
ホレス・シルヴァーからヴィンス・メンドーサに至る新旧ハードバップに、
マイケル自作のファンクやバラードという色とりどりのレパートリーを、
マイケル・ブレッカー印のシーツ・オヴ・サウンドで、たっぷりと料理してくれています。
いやあ、生前にこういうリーダー・アルバムを残して欲しかったよなあ。
ハイライトは、マイケルをアイドルとしていた24歳の若きメンバー、マヌエル・ドゥンケルが、
憧れのマイケルとソロ・バトルを繰り広げた“Ginare”。
マイケル本人を前に、マイケルのテクニックを駆使して、負けじと対抗しています。
あれ?今のソロはどっちだ?とわからなくなるほどマイケルそっくりで、
スリリングなソロ・リレーは聴きごたえたっぷりです。
マイケル・ブレッカーとビッグバンドの相性の良さもバツグンの本作、
フィンランド国営放送YLEのアーカイヴ・ソースを採用し、録音も申し分のない傑作ライヴです。
UMO Jazz Orchestra with Michael Brecker "LIVE IN HELSINKI 1995" Random Act RAR1018CD