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サハラン・ロックの嘆き エムドゥ・モクタール

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Mdou Moctar  Ilana.jpg

『パープル・レイン』のトゥアレグ・バージョン映画
“AKOUNAK TEDALAT TAHA TAZOUGHA” で主役を演じた
エムドゥ・モクタールの新作がリリースされました。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-12-04

前作は弾き語りのアルバムでしたけれど、
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-10-18
今作は、エムドゥ本領発揮のギター・バンド・スタイルのアルバム。
あ、ちなみに、「ムドゥ」と書いている人がいますけれど、
映画を観ればわかるとおり、現地ではエムドゥと呼ばれています。
Mdou はM.dou を省略したものだからなんですね。

さて、今回は初の本格的なスタジオ録音。
アメリカへ渡り、デトロイトでレコーディングしています。
エムドゥのリード・ギターに、リズム・ギター、ベース、ドラムスの4ピース・バンドで、
ベースはワシントンのアヴァンギャルド・バンド、
レ・リノセロスのベーシスト、マイケル・コルトゥンが務めていて、
マイケルは、レーベル・オーナーのクリストファー・カークリーとともに、
プロデューサーにもその名を連ねています。

レ・リノセロスは、ヘヴィー・メタル、マス・ロック、ノイズ、音響系、
クレズマー、レゲエなどをごたまぜしたバンドで、
ツァッディークからアルバムをリリースしているといえば、おおよその想像はつくかな。
そのレ・リノセロスのリーダーであるマイケルは、カマレ・ンゴニを弾いたり、
‘Takamba’ なんてタイトルの曲も書いていたので、
きっとサハラの音楽にも通じている人なんでしょうね。

冒頭のかすかな音量で分散和音をピッキングするギターに、
歌とコーラスのかけあいが静かに重なり合う幻惑的なオープニングから、
独特の雰囲気に包まれます。
静寂を破るドラムスのフィルに導かれて、
エレクトリック・ギターの金属的な響きを高らかに奏でられる時点で、
はや持っていかれちゃいました。

じわじわと熱を帯びて、曲後半になるほどに激しさは増し、
エムドゥのギターがジミ・ヘンドリックスばりに唸りを上げます。
左右のチャンネルを行き来するギター・ソロには、めまいがしそう。

この痛快なロック・サウンドは、先輩格ボンビーノと共通するセンスで、
エムドゥはボンビーノの強力な対抗馬となりましたね。
二人ともヴォーカルは弱いものの、それを補って余りある
力量のあるギター・ミュージックを聞かせてくれます。

二人の違いと言えば、割り切りの良いドライなボンビーノに比べ、
エムドゥにはアソウフが醸し出すディープな情感が強くあるところでしょうか。
タミクレストの寂寥感を思わす、サハラン・ロックのブルージーな嘆きが、
たまらなく人を惹きつけます。

Mdou Moctar "ILANA:THE CREATOR" Sahel Sounds SS051 (2019)

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