音楽って、こんなにシンプルでも、これほど楽しくできるんだなあ。
そんなことをあらためて教えてくれる、マラウィのマダリッツォ・バンドです。
バンドを名乗っているものの、実はたった二人のコンビであります。
ババトニなる手作りの1弦ベースの弦をぶんぶん鳴らし、
空き缶を弦に当ててノイズをまき散らしながら、
ぶっきらぼうに投げつけるように歌うヨブ・マリグワくんと、
ギターをかき鳴らしながら、
足踏み太鼓でツンのめるビートを叩き出すヨセフェ・カレケニくん。
言ってみれば、たったこれだけの音楽。
それなのに、そこから生み出される、
みずみずしい生命力、ワクワクする躍動感といったら、どうです。
太鼓もベースもハンドメイドという、貧しさ丸出しにもかかわらず
そこから生み出される音楽の豊かさは、いったいどういうわけなんでしょう。
はじめに「シンプル」とか口走っちゃいましたけれど、じっくりと耳をすませば、
ベースの装飾音やリズム・アレンジなど、その複雑なニュアンスに驚かされます。
レコーディングに何万ドルのバジェットを使ったとて、
これだけの音楽が生み出せるわけもなく、あらためて音楽制作とはなんぞやと、
振り返って考え直される案件なんじゃないでしょうか。
普段は路上だったり、市場の片隅で歌っているに違いありません。
ダンスホールやナイトクラブなどとは、無縁の音楽。
思えば独立前のニヤサランド時代から、廃品から作った楽器や
バンジョーやギターを弾き語る辻芸人やストリング・バンドがいましたけれど、
マラウィで圧倒的に魅力を放ってきたのは、いつもこうした音楽でした。
ヒュー・トレイシーがフィールド録音していた70年近くも昔の時代から、
60年代に南アから流入して流行したクウェーラ・バンド、
ここ最近ではマラウィ・マウス・ボーイズに至るまで、一貫しています。
資源のない内陸の農業国で世界最貧国のマラウィだから、
こういうビンボーくさい音楽しかないのだ、なんて誤解が広まってはいけないので、
マラウィの名誉のために言っておきますが、
マラウィにはヒップホップだって、R&Bだって、レゲエだってあります。
ありはしても、そうした音楽に、欧米の焼き直し以上の魅力がないのも、また事実。
これはマラウィばかりでなく、隣国のザンビアやタンザニアの音楽事情も同じですね。
ザンビアのR&Bと田舎で演奏されるカリンドゥラと、どっちが面白いかといえば、
カリンドゥラの圧倒勝利でしょう。
以前、このブログで取り上げたヴェテラン音楽家ウィンダム・チェチャンバにも、
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-03-31
無垢な音楽性を感じたものですけれど、
マダリッツォ・バンドの人を巻き込まずにはおれないグルーヴにも、
無垢の美をおぼえます、
Madalitso Band "WASALALA" Bongo Joe BJR029 (2019)