まるでクリフトン・シェニエのバイユー・ソウルが現代に蘇ったかのような
アコーディオン・サウンドに目を見開かされました。
ごりごりの伝統ザディコを聞かせる主役は、コーリー・レデット。
生まれも育ちもヒューストンながら、家族のルーツはルイジアナ州のパークスにあり、
夏休みはいつもルイジアナの田舎で過ごしたというコーリー・レデット。
クレオール・カルチャーにどっぷり浸かって育ったコーリーは、
わずか10歳で地元ヒューストンのザディコ・バンドのステージでドラムスをプレイし、
その頃からアコーディオンを習い始めたのだそう。
演奏しているのが、小型のボタン式アコーディオンではなく、
鍵盤式アコーディオンだから、蛇腹の響きがだんぜんパワフル。
重量感のあるサウンドは、案外派手さはなく、
鈍く渋い響きにいぶし銀の味わいがあります。
コーリーの技量が、これまためちゃめちゃ高くて、
猛烈なスピードの‘Muscle Zydeco’ で聞かせる圧倒的なテクニックには、口あんぐり。
それがイヤミにならないのもこの人のいいところで、リズムの塊と化して、
グルーヴに身を投じる姿が、なんともすがすがしいじゃないですか。
豪快なブギーでトばす‘Dragon's Boogie’ でも、同じことが言えますね。
そんなダンス・チューンの一方で、ディープなブルースもやれば、
哀愁に富んだホーン・セクションが泣けるワルツを奏でたりと、
硬軟の使い分けが実に鮮やか。
全曲自作で、ポップ・ソングもあるんですが、
コンテンポラリーやイマドキのR&B色は皆無で、70年代モータウン調。
近年のレトロ・ソウルのような作り物感がないのは、
ネラったものではなく、自然体でこの音楽が生み出されている証左でしょう。
どこまでもオーセンティックなのが、コーリーの音楽性なのですね。
Corey Ledet and His Zydeco Band "ACCORDION DRAGON" Corey P. Ledet CPL0010 (2018)