オフィス・サンビーニャの新作情報を見て、オドロきました。
ポルトガルのトラジソンから出ていた『ザ・ジャーニー・オヴ・サウンズ』シリーズが、
ライス・レコードからリリースされるとのこと。
もう15年以上も昔のシリーズですよ。
よくもまあ廃盤にならず、カタログに残ってたもんですねえ。
これ、素晴らしいシリーズなんですよ。
20世紀大衆音楽史に関心を持つ人なら、ゼッタイ聞き逃せないものです。
ポルトガルが大航海時代に世界各地へ遺した、音楽文化の痕跡をたどる企画で、
ポルトガルがかつて統治したアジア、アフリカ、南米の国々や地域の
民俗音楽とポピュラー音楽が分け隔てなく収録されています。
98年リスボン万博のポルトガル・パヴィリオンの公式CDとしてリリースされた全12タイトル。
ここでしか聞けない音源多数の貴重な録音集で、フィールド・レコーディングあり、
スタジオ録音あり、商業録音の復刻ありの、贅沢な編集内容となっています。
100ページを超す分厚いブックレットには、英語・ポルトガル語併記の充実した解説もあり、
研究資料として一級品というだけでなく、魅惑の南洋歌謡を存分に楽しむことができます。
これまでこのブログでは、本シリーズの“KRONCONG MORITSKO - SUMATRA” を
ちらっと取り上げただけですけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-05-02
拙著『ポップ・アフリカ700/800』には、モザンビークの合唱音楽マクワエラの名盤
“MAKWAYELA - MOÇAMBIQUE” を入れました。
アフリカ編では、サントメ島の“TCHILOLI - S.TOMÉ” も素晴らしいんです。
奴隷貿易の中継点だったサントメ島に息づく民俗劇の音楽チロリは、
ポルトガル人が伝えた中世の戯曲の脚本をもとに、
奴隷廃止後にブラジルから渡った労働者がもたらした音楽と融合して生まれたもので、
首から下げた太鼓、シェイカー、横笛によって演奏されます。
軽やかな笛の音色と弾む鼓笛隊のリズムは、ブラジル北東部のピファノのバンダそのもので、
アフロ・ブラジリアン文化がアフリカへ先祖帰りしてクレオール化した伝統芸能といえます。
またアジア編では、スリランカの村の歌自慢コンテストで歌われるカフリンニャが聴ける
“CANTIGAS DO CEILÃO - SRI LANKA” も聴きもの。
ポピュラー音楽が再土着化した姿は、ガーナの田舎で今も演奏されるパームワインのよう。
続編の“BAILA CEILÃO CAFRINHA! - SRI LANKA” でも、
南洋ミクスチュア歌謡の極みともいえる歌の数々に酔えます。
ただのフィールド・レコーディングの民俗音楽シリーズと思ったら大間違いの、
『ザ・ジャーニー・オヴ・サウンズ』シリーズ。
興味のある国や地域から、ぜひ聴いてみてください。
Collections : A Viagem Dos Sons / The Journey of Sounds
"GAVANA - GOA" Tradisom VS01
"CANTIGAS DO CEILÃO - SRI LANKA" Tradisom VS02
"BAILA CEILÃO CAFRINHA! - SRI LANKA" Tradisom VS03
"DESTA BARRA FOR A DAMÃO, DIU, COCHIM, KORLAI" Tradisom VS04
"KANTIGA DI PADRI SA CHANG - MALACA" Tradisom VS05
"KRONCONG MORITSKO - SUMATRA" Tradisom VS06
"FÁLA-VAI FÁLA-VEM - MACAU" Tradisom VS07
"TATA-HATEKE BA DOK - TIMOR" Tradisom VS08
"MAKWAYELA - MOÇAMBIQUE" Tradisom VS09
"TCHILOLI - S.TOMÉ" Tradisom VS10
"DEZ GRANZIN DI TERA - CABO VERDE" Tradisom VS11
"O CAVALO MARINHO DA PARAÍBA - BRASIL" Tradisom VS12