アルバニアのポップ・フォークというのは、初体験ですね。
当地で人気女性歌手だという、ポニーの最新作です。
ブルガリアのチャルガや、セルビアのターボ・フォークに似たサウンドを基調としながら、
バルカンばかりでなく、トルコやギリシャのポップスからの影響もうかがわせる
多様な音楽性を聴きとることができます。
これがアルバニアのポップスの特徴なのでしょうか。
こんな魅力的なポップスを生み出しているとは、知りませんでしたねえ。
ハネるダンス・ビートは、曲ごとさまざまなシンコペーションによる
ヴァリエーションがあって、飽きさせません。
各曲ともバルカンらしいクラリネットが大活躍していて、
ひらひらとしたリフが宙を舞うと、思わずステップを踏んで踊り出したくなります。
アコーディオンやヴァイオリン、ブズーキを効果的に使って、
フォークロアな音感を散りばめながら、打ち込みによるダンス・ビートと融合させる
プロダクションの洗練具合は、ブルガリアやセルビアを凌いでるんじゃないですかね。
こうした音楽は、どうやらアルバニア南部の民謡をベースとしているらしく、
本作のハイライトは、2つのヴァージョンで聞ける結婚祝いの歌‘Kolazh’ です。
アルバニア南部ペルメト出身のヴェテラン民謡歌手ヴァスケ・ツーリと
デュエットしたヴァージョンと、男性デュオのイリ&バジャルミをフィーチャーした
ヴァージョンが聞けるんですけれど、途中で何度もリズムをスイッチしながら、
人々をダンスの渦に巻き込んでいく祝祭感がたまりません。
ポニーもアルバニア南部の港湾都市ヴロラ出身で、
気風の良さに加え、スローで聞かせる艶っぽさもあって、魅力的なシンガーです。
Poni "IDENTITET" Ekskluzive Supersonic no number (2019)