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モノマネなんかいらない クティマンゴーズ

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KutiMangoes  AFROTROPISM.jpg

デンマークのアフロ・ジャズ・バンド、クティマンゴーズの3作目となる新作です。
ブルキナ・ファソ人歌手をフロントに立てた過去2作も良かったけれど、
白人メンバー6人のみで、アフリカ音楽のリズム探究を深めた本作、
会心の出来じゃないですか。

ぼくがクティマンゴーズを買っているのは、アフリカ音楽のモノマネに終わっていないから。
逆に、ぼくがあまたあるアフロビートそっくりさんバンドを評価しないのは、
完コピーしただけの音楽なんて、何の価値もないと考えているからです。
ビートルズ・バンドと同じようなもので、アマチュアの愉しみとしてならわかるけど、
それをレコードにして金をとるってのは、プロの音楽家として、どうなのよと。

こういうと、モノマネ芸を否定するのかとか言われるんですけれど、
そもそも「モノマネ芸」になってないじゃないですか。
「芸」になってない、ただのモノマネだから批判してるんです。

それを強く感じたのが、
アンティバラスの“WHO IS THIS AMERICA?” が評判になった時です。
えぇ~、みんなあれを絶賛しちゃうんだと、かなり呆れていたんですけれども、
そんなのはぼくだけなのか、その後もアコヤ・アフロビート・アンサンブルや
マイケル・ヴィール&アクア・イフェなど、
雨後のタケノコが続くのに、ウンザリしてました。
贋作は時に本物を超えるともいいますけれど、だから何?
憧れや影響を血肉化して、自分たちの音楽を作る人にしか、ぼくは興味をもてません。

このクティマンゴーズは、西アフリカ音楽に大きな影響を受け、
アフリカのリズム構造を理解してさまざまな民族のメロディを取り入れる一方、
3管バンドの管楽器の鳴りには、北欧ジャズのハーモニーの特徴が浮き彫りとなっていて、
アフリカとヨーロッパそれぞれの良さが十二分に活かされたバンドなんですね。
彼らがアフリカのクロス・リズムを学んだのは、
バラフォンの左手と右手が生み出すポリリズムからだそうで、
そのアプローチは、スウェーデン人ジャズ・ドラマーのベンクト・バリエルが
クリエイトしたアフロ・ジャズと共通するものがあります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-01-14

そんなポリリズムが生かされたオープニングの‘Stretch Towards The Sun’、
グナーワのカルカベのリズムをカクシ味にした‘A Snake is just a String’、
南アのホーン・アンサンブルのソリを思わせる‘Call of the Bulbul Bird’、
ギターがカマレ・ンゴニのようなフレーズを奏で、
ペンタトニックのメロディがまるでバンバラ民謡みたいな‘Thorns to Fruit’ などなど、
アフリカ音楽を研鑽してきた跡が、そこらじゅうに点在しています。
‘Money is the Curse’ でのアフロビート解釈なんて、
モノマネ・バンドの足元にも及ばないサウンド構造の解体と再構築の深さがあります。

そんなアフリカ音楽愛にもとづいた深い知識と、
バリトン・サックスとトロンボーンの厚みのある合奏などにみられる肉感的な演奏が
あいまって作り出されるサウンド、大いに支持したいですね。

KutiMangoes "AFROTROPISM" Tramp TRCD9083 (2019)

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