去年の暮れ、調べものついでに、アンゴラ、ギネア=ビサウ、カーボ・ヴェルデ、
サントメ・プリンシペといったポルトガル語圏アフリカのCDを
<ここ掘れワンワン>していたら、アンゴラのヴェテラン・シンガー・ソングライター、
フィリープ・ムケンガの13年作を発見しました。
フィリープ・ムケンガについては、以前一度記事を書きましたけれど、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-08-14
今回手に入れた13年作が、いまのところ最新作のよう。
いまごろ気付いたのもお粗末な話ですけれど、
40年を越すキャリアで、まだ5作目というのは、寡作家ですねえ。
タイトルを見て、ギネア=ビサウのグンベーを歌っているのかと早とちりしたんですが、
よく見たらグンベーではなくグンベで、フィリープの本名、
フランシスコ・フィリープ・ダ・コンセイソーン・グンベからきているようです。
ブラジルのジャズ・ピアニスト、
ルイス・アヴェラールを迎えてリスボンで制作した本作、
ぐっとジャジーなサウンドに仕上がっていて、
フィリープの個性的なソングライティングが芳醇な香りを放つ、
大人のポップスに仕上がっています。
キンブンド語、ウンブンド語、クワニャマ語、ポルトガル語、英語と
多言語で歌っていますけれど、昔から変わらないのは、
ブラジルのシンガー・ソングライター、ジャヴァンの作風が瓜二つなこと。
奇しくも同じ49年生まれという二人ですけれど、
フィリープ自身ジャヴァンからの影響を隠しておらず、
ブラジル色の強いメロディ・メイカーぶりを、今作でも発揮しています。
また今作は、ジャヴァンとの仕事でも知られるルイス・アヴェラールが
プロデュース、アレンジしているので、よりMPBのセンスが強く感じられますね。
オープニング曲のみンゴニを使って、西アフリカ風のサウンドを創作していますけれど、
それはほんの味付け程度のもので、全編ポルトガル人ミュージシャンによる生演奏。
プログラミングを全く使用していないところは、潔ささえ感じさせますね。
7管のホーン・セクションも加わる贅沢なプロダクションで、
ありていなキゾンバとは天と地ほども違う、ゴージャスなサウンドとなっています。
これほどの力作も、ポルトガル制作のポルトガル盤という事情ゆえ、
まったく世間に知られぬままとなっているのは、残念すぎます。
Filipe Mukenga "O MEU LADO GUMBE" Get!Records (Portugal) GET00005/13 (2013)