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緊張と緩和のジャズ・ゲーム 蘇郁涵

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Yuhan Su  CITY ANIMALS.jpg

ジャケット画の空飛ぶペンギンに、
3月3日から休館になって観に行けなくなってしまった、
池袋のサンシャイン水族館を思わずにはおれません。
年間パスポートを持っているのも、お目当てはあの空飛ぶペンギンなんですよ。

そんなしばらくごぶさたの空飛ぶペンギンですけれど、
本作の主役、ニュー・ヨークを拠点に活動するヴィブラフォン奏者ユハン・スーは、
台湾人ジャズ・ミュージシャンでもっとも有望視されている人なんだそう。

サニーサイドから出たユハンの3作目となる本作は、
台湾の音楽賞の金音創作獎で、最優秀アルバム賞に輝いたとのこと。
金音創作獎は、クリエイティヴな才能に賞が与えられる音楽賞で、
金曲獎のような台湾版グラミー賞と呼ばれるメインストリーム寄りの賞ではなく、
将来を期待される有望な音楽家に与えられる賞なんですね。
台湾では小さなマーケットにすぎないジャズから、
作品が選ばれるのは、とても有意義なことです。

そのアルバム“CITY ANIMALS” は、
ニュー・ヨークのジャズ・シーンで活躍中の若手を揃えた作品。
ユハンのほか、トランペットのマット・ホルマン、
アルト・サックスのアレックス・ローレ(ロアではありません)に、
ギリシャ人ベーシストのペトロス・クランパニス、
ドラマーのネイザン・アルマン=ベルの変則クインテットです。

全曲ユハンのオリジナル。モーダルでややダークな楽曲が多いけれど、
トランペットとサックスの即興に、
まろやかなヴィブラフォンがハーモニーでカラーリングしていきます。
アンサンブルは緻密だけれど、作曲と即興のバランスがよく取られているのが、
現代的なジャズらしさですね。トランペットとサックスが即興で掛け合ってから、
するっとハーモナイズを展開していくところや、リズムを変化させながら、
場面展開していくのが実に巧み。

一聴オーソドックスなコンテンポラリー・ジャズのようにも振る舞いながら、
M-Base ゆずりのリズムの実験を随所で繰り広げていて、
さすがはグレッグ・オズビーのレーベル、
インナー・サークル・ミュージックの出身者だけありますね。
緊張と緩和をひとつのゲームの中で構築する高い作曲能力が、この人の強みでしょう。

Yuhan Su "CITY ANIMALS" Sunnyside SSC1529 (2018)

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