ノルデスチの伝統ダンスのひとつ、シランダのメストラ(達人)とリスペクトされる
リア・デ・イタマラカーが素晴らしいアルバムを出しました。
シランダは、その昔、漁師の妻たちが夫たちの帰りを待ち、
砂浜で大きな輪を作って歌い踊ったというビーチ・ダンスで、
ペルナンブーコ州の大西洋に面したイタマラカー島が発祥とされています。
そのイタマラカーに生まれ育ち、ステージ・ネームにもその名を冠した
リア・デ・イタマラカーことマリア・マダレーナ・コレイア・ド・ナシメントは、御年76歳。
子供の頃からシランダの集まりであるローダス・ジ・シランダに加わり、
シランダが身体に沁みついている生粋のシランデイロです。
シランダという語は、アラビア語を起源とするスペイン語の zaranda (粉ふるい)に
由来するといわれていて、遠くアラブの文化も底流に流れるという、
歴史の深さを思わせるダンスなんですね。
いまもイタマラカーでは、ビーチに大勢の人が大きな輪を作り、
円の中心に歌手に打楽器・管楽器の奏者がシランダを歌い奏しています。
リアが19年に出したアルバム“EU SOU LIA” は、
伝統的なシランダを歌った名作でしたけれど、
9年ぶり、4作目となる今作は、シランダの伝統に立脚しながら、
シランダばかりでなくスカやクンビアのリズムも取り入れて、
現代的にアップデートしたサウンドを聞かせます。
その見事なサウンド・プロデュースを施したのは、
レシーフェを拠点に活躍するマンギ・ビート新世代のDJドローレス。
う~ん、いい仕事をしましたねえ。
カリンボーのドナ・オネッチの12年作“FEITIÇA CABOCLO” でみせた、
マルコ・アンドレの手腕に通じるじゃないですか。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-01-14
リアと女性二人によるチャントに、波音や電子音を施した
オープニングのミスティックなムードは、申し分のない演出で、
聴く者をイタマラカーのビーチへ誘います。
この曲はアレッサンドラ・レオーンの作なんですね。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-05-31
続く2曲目の‘Meu São Jorge’ では、チューバを起用して、
打楽器と管楽器で演奏されるオーセンティックなシランダの味わいを
前面に押し出しながら、モーグやギターを効果的に用いて、
ハイブリッドなシランダに仕上げています。
今回のアルバムでは、このチューバの起用がすごく利いていますね。
ノルデスチのヴェテラン・シンガー・ソングライター、シコ・セザール(懐かしい!)作の
‘Desde Menina’ も、インジオ色の強い哀愁味たっぷりのメロディにピファノが絡みつく、
ノルデスチ満開のサウンドで、たまりませんねえ。
妖しいエレクトリック・ギターの音色と泣きのサックスがせつないメロディを彩る、
ボレーロの‘Companheiro Solidão’ も実にいい味わいです。
ココのアウリーニャ・ド・ココ、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-07-13
カリンボーのドナ・オネッチ
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-09-23
そして、シランダのリア・デ・イタマラカーと、
ノルデスチ芸能を代表する女主人3人ですね。
Lia De Itamaracá "CIRANDA SEM FIM" no label no number (2019)
Lia De Itamaracá "EU SOU LIA" Ciranda/Rob 199.009.131 (2000)