完全復活とともに成熟をみせた一大傑作『幸福』から4年ぶりの新作、
50代の岡村ちゃん、期待を裏切らない出来で、楽しませてもらってます。
前作の『幸福』は、やたらと耳にひっかかる歌詞が多くて、
普段言葉に頓着せず音楽を聴く自分にとっては珍しく、
歌詞カードを確認したりしたものでしたけれど、
今作はスキなく作られた岡村ワールドを演出するサウンドに没入しています。
過剰なほどヒリヒリした歌詞を書いてた前作の岡村を、
少し心配もしていたので、ちょっぴり安心したかな。
しょっぱなの「成功と挫折」から、「インテリア」「ステップアップLOVE」と
切れ目なく続く、怒涛の3曲がスゴイ。
その後も5曲目まで矢継ぎ早に曲が進み、
岡村のライヴを聴いているような錯覚を覚えます。
ボトムのぶっといデジタル・ファンクに小山田圭吾のギターが絡む「成功と挫折」から、
ラストの「赤裸々なほどやましく」に至る全9曲、
ミックスを含めサウンドの細部に至るまで、神経を配られているのがよくわかります。
岡村のサウンド美学が透徹したプロダクションの見事さにはもう、降参するしかないですね。
チャーミングなメロディの「少年サタデー」で、
エンディングにEW&Fの「セプテンバー」が引用されるおちゃめぶりにも、ニヤリ。
ライムスターのラップをフィーチャーした「マクガフィン」のキレもバツグンです。
岡村の絶頂は『家庭教師』の時ではなく、今ですね、いま。
岡村靖幸 「操」 V4 XQME91007 (2020)