こちらはコモロのラッパー。
サウンド・プロダクションにコモロらしさはみられないとはいえ、
インド洋ヒップ・ホップのクオリティの高さがまるっとわかる、良作です。
チャッキー・ミスタ・レスことファハド・ユスフは、8歳の時からダンスに夢中になり、
のちにコモロ初のヒップ・ホップ・ダンス・グループを結成したという、
いわばダンサー上がりのラッパー。
だからか、リズムのノリはバツグンで、コモロ語のフロウは、
レーベル・オーナー、シェイク・MCを凌駕するスキルを感じさせます。
チャッキー・ミスタ・レスは、
16年にレユニオン島で開かれたイヴェント「インド洋の声」で
ベスト・コモロ・アーティストに選ばれ、
翌17年にシェイク・MCのフランス・ツアーに同行し、
その後シェイク・MCの後を追うようにパリへ移住して、
本デビュー作を完成させたといいます。
たしかにこのプロダクションをコモロ現地で実現するのは、難しいでしょうねえ。
ヴァラエティ豊かな全14トラックには、
6人のフィーチャリング・ゲストが参加していて、
ダディポスリムもチャッキーとデュエットしています。
その曲‘Tsi Hwandza’ は、ダディポスリムらしいロマンティックなラヴ・ソングで、
哀愁に富んだメロウなサウンドが、アルバムのフックとなっています。
ラッパーのOU2Sがごついフロウを聞かせる‘Punchline’ も
切迫感に溢れ、胸に迫ります。
アフリカン・ヒップ・ホップの裾野の広さを実感させる、
コモロのベスト・ラッパーによる充実作です。
Chucky Mista Res "NDOPVI EKA TSI NDAM’" Watwaniy Production 002699311/18/1 (2018)