こんなステキなヴォーカル・グループがいたとは知りませんでした。
10年以上も前にタンザニアで出ていたアルバム。
タンザニアでレコーディング、オーストラリアでミックスされ、
CDのプレスもオーストラリア製ということで、デザインも洗練されていて、
このまんまインターナショナルなマーケットに通用する作品に仕上がっています。
ソワーズ・グループは、ルワンダ内戦から第一次コンゴ戦争に至る混乱期を
サヴァイヴしたコンゴ民主共和国出身の3人に、ルワンダ出身の女性から成る4人組。
東アフリカのゴスペルのハーモニーと、ルンバ・ロックのサウンドに
コンゴ、ルワンダ、タンザニアの伝統リズムをミックスしたヴォーカル・グループです。
洗練されたコーラス・ワークに、野性味のあるヴォーカルは得難い味わいがあり、
彼らが経験してきた苦難の道が、音楽にしっかりとした説得力を与えています。
ソングライティングにはポップなセンスもあり、ヴァラエティのある楽曲がスグレモノです。
東アフリカや南アではこうしたヴォーカル・グループが珍しくありませんけれど、
西洋人向けにアフリカ風を演出した創作の演出がハナについて、
シラけてしまうケースがよくあるんですよね。いわば<観光アフリカ音楽>みたいな。
そんなグループとは出自が違うことは、彼らの肉声を聞けば、イッパツでわかります。
ぼくもCDを聴いてノック・アウトをくらい、のちに彼らのバイオを読んで、
やっぱりねと思ったくらいだから、音楽ってのは嘘をつけないというか、
素性を怖いくらい明らかにしてしまうものなんですね。
アフリカのゴスペル・グループなら、なおさらの話で、
うわべの熱狂が空々しいケースも枚挙にいとまがないんですが、
ぼくが反応したのも、数多くの死を目にして生き抜いてきた者たちだけが
獲得できる真実が、彼らの歌に嗅ぎ取れたからです。
これが2作目だそうで、制作にはオーストラリアのアフリカ支援団体が協力しています。
アディショナル・ミュージシャンとしてクレジットされた名前を見ると、
ドラマーだけはアフリカ人のようですが、ほかはオーストラリア人のようで、
本作リリース後、オーストラリアとニュー・ジーランドをツアーしたとのこと。
CDに記載されているウェブ・サイトもすでに閉鎖されてしまっていて、
現在の活動の様子が不明なのが残念です。
きちんとプロモートすれば世界にも通用したグループなのに、もったいないですね。
The Sowers Group "CHEZA!" Pamoja Ministries/Translator no number (2009)