アンゴラ音楽連投第三弾は、ヴェテラン・シンガーの追悼作。
56年ルアンダ、バイロ・マルサルに生まれた
ゼカックスことジョゼ・アントニオ・ジャノタは、
長く内戦下にあったアンゴラ音楽の停滞時代に、
アンゴラ国内で歌手活動を続けたシンガーです。
キサンゲーラ、オス・メレンゲス、ディアマンテス・ネグロス、
ジョーヴェンス・ド・プレンダ、オス・キエゾスなどのバンドを渡り歩き、
30年を超すキャリアの末に初のソロ・アルバム制作に取り掛かるも、
持病の悪化により、完成を待つことなく12年12月に亡くなりました。
平和な時代に歌手活動ができていれば、何枚もソロ・アルバムを出していただろうに、
この時代を過ごしたアンゴラ国内の多くの音楽家同様、不遇な歌手でした。
本作は、そんなゼカックスの最初にして最後のレコーディング11曲を収めたディスクと、
もう1枚‘Memórias’ のサブ・タイトルで、
往年のヒット曲14曲を収めた2枚組となっています。
‘Memórias’ の14曲は、80年代録音が中心のようですけれど、
発表年やバンド名などのクレジットが一切ないのは、遺憾です。
追悼作なのだから、故人の功績を称えるためにも、きちんと載せるべきでした。
音を聞く限り、クロノロジカルに並べてあるようで、
初期のレパートリーにメレンゲが多いのは、オス・メレンゲス時代の録音でしょうか。
いずれの曲もホーン・セクションをフィーチャーしていて、聴きごたえがあります。
初期録音のホーン・セクションは、チューニングが甘かったりするんですけれど、
後年の録音ではビシッときまっていますね。
ジョーヴェンス・ド・プレンダ時代のヒット曲‘Makota Mami’ ‘Fim De Semana’や
オス・キエゾス時代のヒット曲‘Maximbombo’ なども収録されています。
そして新録のソロ・アルバム‘Avó Sara’ は、DJマニャのアレンジによる
新時代センバのサウンドに溢れた作品となっています。
新曲に交じって往年のヒット曲‘Fim De Semana’ も再演していて、
曲によりラテンやズークのアレンジが施され、
エレガントなキゾンバやボレーロもあり、カラフルなサウンドが楽しめます。
終盤のハイライトは、アンゴラ伝統音楽のパーカッション・グループ、
キトゥシがバックを務めた、2010年のカーニバル優勝曲‘Mulher Angolana’。
フィリープ・ムケンガ作のカーニバル・ソングで、
カズクータ(ルアンダのカーニバル・ダンス)が十八番の
ゼカックスにうってつけの選曲です。
そしてラスト・トラックは、オープニング・ナンバー‘Panxita’ のハウス・ミックスで、
クラブ世代の若者にもアピールしようという、ヴェテランの意気を感じますねえ。
生前に出せなかったのは、実に残念ですが、
ゼカックスのキャリアを総括した見事なアルバムです。
Zecax "AVÓ SARA" Xikote Produções no number (2013)